「パワプロ7」で描かれた兄弟の物語
- 2025年11月20日
- 読了時間: 5分
更新日:2025年12月15日
守の弟への過干渉と、進のコンプレックスに焦点が当てられたのが「パワプロ7」です。
守は7では「読売ジャイアンツ」に主人公の同期として入団しています。
翌年、ドラフト会議を前にした守は主人公と矢部くんに「聞いて驚け。今日のドラフトで我が巨人に僕の弟が入ってくるんだよ」と自慢げに伝える。
しかし、進は「オリックス・ブルーウェーブ(現在のオリックス・バファローズ)」を逆指名しました。
進はそのままであれば間違いなくジャイアンツからの指名がかかっていたと思われますから、あえてオリックスを指名するということは「守と同じ球団に入るつもりはない」という意思表示とも取れます。
テレビを観て初めてそれを知った守は「な、なんだって! 何かの間違いだ!」とひどく動揺してその場から去ってしまいます。
それから1年後、「進がオリックスの一軍レギュラーに定着した」という情報が主人公たちの耳に入りました。
進がジャイアンツに入るのを楽しみにしていた守ですが、進がオリックスで活躍していることを聞くと「進が一軍レギュラーだって? どうせすぐ二軍に落とされるのが関の山だな」と卑下します。
そんな守の物言いに対して主人公が「弟だからってそんな言い方はないだろ!」と憤慨すると、守は更に「ふん! 進なんてまだまだ子供さ。それがスタメンになるのは、よほど捕手がいないんじゃないのかい?」と進の悪口を続けます。
その後、オリックスとの日本シリーズを控えた守は目に見えて不調でした。
そんな守に主人公が「進くんのことだろう?」と問い質すと、守は「進は本当は僕と一緒の球団に入りたかったはずなんだ。あいつは俺がいて初めて一人前だったんだ。俺が守ってやらなきゃいけないんだ。そんな進が僕と戦いたいはずがないじゃないか」と主張し、頑なに進の意思を認めようとしません。
(※守の一人称がコロコロ変わっていますが、原文がこのようになっています)
そんな守に主人公は「戦いたくないのはお前のほうじゃあないのか? もう彼は立派なプロ野球選手だ。オレ達のライバルの一人なんだよ。お前はそれを認めたくないんだ」と指摘します。
「うるさい! 進のことは僕が一番解っているんだ」となおも食い下がる守を、主人公は「いや、解っていない! 解かろうとしていない。お前も理解しているはずだ。兄に頼らなければ何も出来ない弟はもういないんだよ」と諭します。
主人公の説得を受けた守は長い沈黙ののち、「子供は僕のほうだったか。いいだろう。ライバルとして進に僕の実力を見せてやるか」と進と対決する覚悟を決めます。
いっぽう、オリックスでは進がエースである神童と共に打撃の特訓をしていました。激しい特訓で疲労してもなおやめようとしない進を神童は「進くん、これ以上は無理だ」と止めますが、進は「いや、まだお願いします!」と食い下がります。
以前から進に対して思うことがあった神童は、進に「そろそろこの特訓の本当の理由を言ってくれないか?」と訊ねます。
進は「僕はただ神童さんに追いつき追い越そうと……」と答えますが、神童は「そうかな? 君の感情は何かを目指すのではなく、何かに追われているような不安感を感じるんだが」と問いかける。
進はしばしの沈黙ののちに「……すみません、神童さん。僕はあなたを利用していました。兄を、猪狩守を倒すために……」と告白します。神童の投球は守と似たタイプであったため、進は対守用の打撃訓練として神童をパートナーに選んだのでした。
進は淡々と話を続けます。
「昔から兄さんは何でも出来た。だから兄さんは僕をかばってくれた。僕はいままで兄さんがいたから試合に勝てた。兄さんがいたから僕は優秀な捕手であれた。僕はいつまでも猪狩守の弟でしかないんだ。僕は兄さんを尊敬する反面、憎んでいた、妬んでいた。だから兄さんを……」
兄を超えるために野球をする進に、神童は「君はそれで満足なのか?」と訊ねます。「神童さんに僕の気持ちはわからないんだ」と進が返すと、そこに主人公が「野球をなめんな!」と割り込みます。
「俺たちはプロ野球選手だ! 人々に野球のおもしろさを、すばらしさを伝える職業なんだ! そんな君と君の兄さんの対決をファン達が見たいと思うか!」と怒る主人公。
進は主人公の言葉を受けて「……僕はどうしたら……」と意気消沈します。そんな進に、主人公は「もっと楽しく自分の野球をしようよ。そうすれば必ず認めてくれるさ。ファンの人々も君の兄さんも……」と説得を続けます。
(すごく無責任な発言ではありますが、実際に進は「7」の続編にあたると思われる「10」や「2010」では入団3年目にして日本球界を代表する選手となっています。進が優秀な選手だからこそ主人公も「必ず認めてくれる」などと言えたのかもしれませんね)
そして、神童も「プロの道を選んだ時点から、猪狩守と猪狩進は同じプロ野球選手だ。これからは君が君の道を作るのだから」と進に語りかけます。
主人公は「見せてやろうぜ、ファンに、兄さんに。オリックスのプロ野球選手、猪狩進の勇姿をな」と進を激励し、3人はジャイアンツとの日本シリーズに挑みます。
日本シリーズ終了後、守と進は久しぶりに兄弟で会話をします。
「進、すばらしかったよ、お前のプレイ。これからはお前も僕のライバルだ」
「兄さん、僕も負けませんよ。今度、兄さんと戦う時は、今以上の選手になって来ますよ」
そう約束する守と進の表情は晴れやかなものでした。
……という感じで、「パワプロ7」はジャイアンツのシナリオでは守に、オリックスのシナリオでは進に焦点を当ててストーリーが進行し、いずれを選択した場合も最後には雪解けを迎えます。
守には守の、進には進の問題があることを作中で提示し、それを主人公が指摘して改善するという流れが双方の成長物語として綺麗なお話であると感じました。



