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守進

  • 2025年5月31日
  • 読了時間: 3分

更新日:2025年6月10日

 ※パワプロ10で確かこういうイベントがあったなあというネタ


 自宅の玄関から去ってゆく父親の背中と、たまたま自宅に招いていた小波が帰るのを見送ったあと、ようやく緊張の糸が解けた進はそっと胸を撫で下ろした。

 父親が血相を変えて玄関の前に立っているのを見たときは、てっきり守との関係がばれたのかと思った。それくらいしか父親があれほどまでに激怒する理由が思い浮かばなかったのだ。

 覚悟を決める暇もなくドアを開けるしかなかった進だが、話を聞いてみればなんてことはない。父親はただ勘違いをしていただけだった。

 いわく、守が進の自宅に入る姿を目撃した父親はここを『守の彼女が住んでいる家』であると思い込んだらしい(この家に引越しをする際に父親にもその旨は伝えておいたはずなのだが)

 そして、その家に小波までが出入りしているのを目撃して「守の彼女が二股をかけており、しかもその相手は守のチームメイトの小波である」と判断したようなのだ。

 その結果、先ほど父親が凄まじい剣幕で進の自宅に突撃してきたというのが事の顛末である。

「……ということがあったんです」

 進は電話先の守に事のあらましを伝えた。

 守は「そうか」とだけ答えたあと、通話状態のまま言葉に迷ったように口を噤んでしまう。

「……やっぱり、怒りますよね。父さん……」

 先に沈黙を破ったのは進だった。

 実のところ、茂の勘違いには一部真実が含まれていたのだ。

 守の彼女が浮気しているということや、その浮気相手が小波であるということは完全に誤解なのだが、ここが守の彼女――否、守の恋人が住んでいる部屋であるということだけは事実だった。

「……僕と兄さんが恋人同士だって知ったら、父さんはきっと許してくれないでしょうね」

 守と進は世間的に言うところの恋人同士であった。しかし、それ以前に血の繋がった兄弟でもある。だからこそ二人はそのことをひた隠しにし、進が一人暮らしをしているマンションでのみ逢瀬を重ねている。

 兄弟であるからこそ、守が進の自宅に入り浸っても関係が露見しにくいというのはあるが――自分たちの関係は誰にも認めてもらえないのだと思うと、進は心に言い様のない虚無感を植え付けられるのだった。

「……父さんにもいつかちゃんと話そう」

「でも……」

「ボクも進もお互いが好きなんだ。恋人と一緒にいたいと思うのは当然だろう?」

 臆面もなく告げられた『好きなんだ』という言葉に進の鼓動が跳ね上がる。しかし、いくら守が愛の言葉を囁いてくれても、胸を張って恋人だと名乗れないのがもどかしかった。

「……そうですね。いつか、きっと……」

 進は自分に言い聞かせるように呟いた。

 それから守と他愛もない会話を交わして通話を終えた進は、自室のベッドに身を投げ出した。

 守と恋人同士でいられるのはあとどれくらいだろう? きっと、それはそう長くはない。守はいずれ猪狩コンツェルンの後継者として然るべき相手と結婚するのだから。

 そして、そのうち進との関係は「若気の至り」として記憶の片隅に追いやられてしまうのだ。進はそれが恐ろしかった。

「兄さん……」

 進は胸の痛みに耐えるようにぎゅっと目をつむる。深く呼吸をすると、先ほど通話を切ったばかりの守の顔が脳裏に過ぎった。

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